【プロジェクト名称】

メタリック材着ウエルドレス成形工法の確立

 

弊社の主たる事業は「クライアント様の技術課題を解決する」というものですが、この開発に関して言えば少し経緯が異なり、取引先企業様の多くから「コスト合理化」「環境保護」の2大要件を強く要望されていたということが背景としてありました。

 

アルミフィラー(細かな線状アルミ材)を混合し、金属調の外観を出すことのできる原料が開発されていることを知った現会長が社内に号令をかけたことからはじまり、それらの材料を使った「塗装レス商品の開発プロジェクト」がスタートしたのでした。

【専門脚注】

アルミフィラー・・・細かな線状アルミ材。フィラーを混ぜることで、樹脂に機能性や色彩を持たせられるというメリットがある。

 

 

「塗装レス商品」とは、「塗装をしていない成形品」のことではなく、正しくは「塗装をしていないのに、塗装をしているかのように美しい成形品」を指します。

 

このメリットは2つ。

1つは、「塗装」という工程が省略されることでコストの削減が可能であること。
もう1つは、「塗装」が省略された結果、「塗料」が不必要となるため、環境保護に寄与すること。

 

 

前述の、当時多く聞かれたご要望に対して、

 

コストが少なく、「環境にやさしい」と謳うことができ、それを従来の塗装した成形品と見紛うほどの美観維持をしながら実現する、というのが本プロジェクトの主旨でした。

 

 

河辺商会の所在地が大阪府堺市であることから、形状のモチーフは「仁徳天皇陵」に決定します。

 

 

この開発においては、

 

・樹脂材料の流れが乱流になることでムラが出やすい

・樹脂が合流する場所(ウエルド部)に黒い筋が出やすい

・輝度をどれだけあげられるか

 

という課題があり、「樹脂の注入方法」がその重要なファクターとなります。

 

 

河辺商会では、

①穴なし形状 サイドゲート方式

②穴1カ所形状 ピンゲート方式

③穴2カ所形状 ピンゲート方式

という3ステップで試作を行い、これらの解決を試みました。

 

【専門脚注】

サイドゲート・・・製品の横から樹脂を注入する方法
ピンゲート・・・小さな穴から樹脂を注入する方法

※ゲートから樹脂が入っていくとき、狭い部分から広い部分に拡がっていく際などに乱流が起きやすい

 

 

長期に及ぶ試行錯誤の末、樹脂の流れる方向を制御することで流れムラの問題を解決。かつ、ゲートと成形品の厚みを均等(筒部均等)にし、流れの抵抗を減らすことでゲート流入ムラを解消することができました。

また、カット断面の形状を工夫することでゲート自動カットを、ウエルドに関しては独自技術(特許出願)によって解決を実現しました。

 

 

本来、2穴があれば必ずウエルドが発生するため、このサンプルを見た取引先の方々からは「どのように製造しているのか?」と必ず聞かれるようになりました。

 

 

外観の光沢が他社成形品より優れていたことも高評価につながり、原料メーカーの方からも多くのお問い合わせをいただいています。

原料営業のツールとしてはこれ以上ない出来であることから、海外へも拡散し、初めてお会いするお客様との商談のときにも「このサンプルは見たことがある」と何度も言われました。

 

 

大阪は堺市にある小さな町工場。

以前は新規営業で話を聞いてもらうことすら困難だった時代もありましたが、この成形品のインパクトのおかげで商談につながることが増え、業界における自社の技術力がトップクラスであるという自信につながったプロジェクトでした。

 

 


 

河辺商会の実績を紐解く「挑戦史」シリーズ。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。

 

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