弊社では、年に一度の方針発表会を通して、自社の進むべき方向性を確認・共有しているのですが、その中で出てきたひとつの疑問がありました。

それは、「私たち自身も気づいていない、私たちの価値があるのではないか」ということです。

もちろん価値や強みだけでなく、課題や弱点なども含め、自分たち自身のことを冷静に把握できているかというところに問題意識を感じた私たちは、「私たちのことをよく知る方」との対談を通して、それを見つけ出そうとすることにしました。

 

 

タイトルは、「河辺商会を知る人」。

タイトルは、「河辺商会を知る人」。
第十回、ご協力いただいたのは、インナーブランディングや採用施策などで約10年もの間、伴走を続けてくださっている株式会社まめ様。

お付き合いを通じて、河辺商会はどんな会社に見えているのか。
商品自体の魅力はどうなのか。
その本音をインタビューしました。

 

 

 


対談
株式会社河辺商会:福田
株式会社まめ:木原様
以下、敬称略

 


木原: 僕が覚えているところでいくと、最初はホームページの依頼でしたかね。まだ僕も創業する前で、前職だったときの。

福田: 内容的にはホームページもあったんですが、そもそもの話は、「新しい社員を入れても、社内の働き方や職場環境が整っていなかったら結局辞めてしまう」という問題があって、だから採用の面と社内の環境づくりを同時並行でやっていかなければ、というところがスタートでした。

木原: そうでしたね。そこから本当に色々な取り組みをやってきましたね。当時から常に色々と試行錯誤されている印象です。

福田:
はい。見た目の部分ですけど、「職場のどこか暗いイメージを明るくしよう」という話になって、壁やシャッターを塗り替えたりとか、周りの木をカットしてちょっと印象を良くしましょうとか、ユニフォームを変えてみましょうとか。
あまりお金をかけずに取り組めるところからやっていこうという中で。

木原: 長期的な部分で言うと、社名を変えるかどうか、みたいな話も出ましたよね。

福田: ありましたね。それから、新卒採用のところでご協力をいただいて、採用活動のためのプレゼン資料だったりチラシをつくったりなど、そういうところをお願いしました。その後、「入ったはいいけと、若手をどういう風に育てていったらいいか」みたいなところも一緒に考えようという感じでした。

木原: 当時、だからまだ専務でいらっしゃった頃ですかね。

福田: そうです。私がこっちへ戻ってきて、多分、1〜2年ぐらいたった頃なので。2015〜2016年くらい。

木原: 当時の福田社長が醸し出してた危機感みたいなものはとても覚えてます。「本当にもう、転換していかなきゃ未来はない」みたいな。

福田: そのあたりは今もそうなんですが、当時で言えば、ずっと仕事をいただいていたところに関して、10年後にはその量が極端に落ちるだろうなというのが見えていたので、みんなが不安に思わない程度に、この流れをどうにかするための取り組みをしなければ、と考えていました。事業を続けていくために。

木原: そこで、技術の継承や世代交代なども課題もありましたよね。

福田:
はい。新しい風を入れるという必要はもちろんあったのですが、やっぱり人の入れ替えなども順序立ててやらなければと思っていて。これも、今でも課題ですが、やっぱり引き継ぐものを引き継いだ上で新しい人に代わっていかないと、無理が出てしまう状況ですよね。

木原: いわゆる「職人さんの世界」というか、「この人しかできない」という仕事が多かったり、やり方がその人その人で違ったりとか、そういう課題に向き合うということですよね。

福田: まさにそうですね。それは事務仕事などの人の引き継ぎなども同じで。年配の方々が中心の組織から、きちんとした順序で生まれ変わっていく必要がありました。

 

 

木原: 考えたら、もう10年になるんですね、タイから帰ってこられて。

福田: そうです。だからまめさんとのお付き合いも、多分8年ぐらい。

木原: 当時から考えたら、この10年ですごい目覚ましい変化を遂げましたよね。業績や売り上げだけではない部分も含めて、本当に変わったんじゃないですか?

福田: はい。人もそうですが、キャッシュフローの部分だったり、設備の新しさであったり。色々と変わりました。

木原:なかなかスタッフの方々に説明するのは難しいかと思いますが、キャッシュフローの改善などは、「会社の安定性=安心して働ける会社づくり」という部分でとてつもなく大きな意味がありますよね。

福田: そうですね。時間をかけてようやく、という感じです。

木原: 一番大きいなと感じる変化は、昔は社長が何か新しいことをやろうとしたときの向かい風というか、抵抗みたいなのがすごいあったなと思って。それは「反対しよう」とかそういう話ではなく、おそらく皆さんがそういうことに慣れていなかったから、口に出しては言わないけど、何となく戸惑っているようなムードになっていたなと。

福田: そうですね。今でもやっぱり、昔からいるスタッフは「ちょっとしたことが変わる」となったときには抵抗感を示すことが多いと思いますよ。最近だと、パソコンを新しく買い替えることになったんですが、これまでのデスクトップ型がノート型になるのに違和感を示していたり、など。若い人たちは、学生のときからノート型のが当たり前なので慣れていますが。

木原: まあでも、やっぱり慣れたものがいいというのはわかりますよね。

福田: TENTさんと話したときに言われたんですが、「自社商品の開発で会社が変わる」というシーンを今までも見てきたが、それは今までいる人が変わるパターンよりも、「そういう新しいことをやる会社なら入りたい」という人が入ることで徐々に変わっていく、というパターンの方が多いと。その通りだなと思いました。

木原: そうかもしれませんね。でも最近は、今の経営企画部のチームであったり、各部署の長の方々であったり、すごくいい感じでまとまっているようなイメージです。

福田: そうですね。そういう意味で頭を抱えることは本当に少なくなりました。最近は「将来的なことを考えると、この部分ってリスクですよね」と言ってくれる人も出てきたりして。本当にありがたいです。

 

 

木原: 2014年くらいって、「インナーブランディング」みたいな言葉はなかったですよね。

福田: なかったですね。だからあえて社内でも「インナーブランディング」という言葉は使わなかったし、社内向けのPR活動みたいなことを言っていたような気がします。

木原: その部分を伝えるの、かなり大変でしたよね。

福田: はい。実際、今でもまだ100%伝え切れてはいません。だから、「KAWABEリーダーシップ」のように、つくってそのまま放置されていたものもあったりして。
面接で「どういう社員を求められているんですか?」と聞かれたとき、今は「河辺リーダーシップっていうものがあるんです」という感じで使うので、新しく入ってくる人は「あ、そういう会社なんやな」と認識して入ってくれるんですが、逆に昔からいる人に今からそれが浸透するかといったら、逆に難しかったりしますね。

木原: なるほど。でも、あれは別に、まったく新しいところからつくった部分もあるかもしれないけど、「河辺商会でこれまで活躍してきた人ってどんな人だろう」みたいな、そういう導き方だったような気はするんですよね。

福田: そうそう。そうなんですよ。

木原: インナーブランディングの話もそうですけど、当時だったら「社内向けの施策に投資をする」みたいな考え方って、本当に大企業しかやっていなかったようなイメージです。社内広報とか。
今でも、中小企業では全然まだやっていないところのほうが多いかなと思います。その辺の、先見の明みたいなところはすごいなと、いつも思ってます。

福田: 直感ですよね。でも、こういう社内向けのことをやってきたからこそ、例えばオープンファクトリーとか、「こういうのやろうと思うんですけどどう思いますか?」と聞かれたときに、関わり方のイメージができたところはあります。以前であれば、「商売につながらないからやらない」となっていたと思います。

 

 

木原: あとはやっぱり、CHOPLATEのヒットというのはものすごく会社を変えましたよね。色々な面で。

福田: これは現実的な話、コロナが明けて、BtoBの仕事が戻ってくるかと思った矢先に大手の不祥事もあったりでめちゃくちゃ打撃を受けている中で、この自社商品があるからこそ、みんなが普通に平穏な暮らしができているというのはあるので、本当によかったなって、心から思いますよ。

木原: そうですよね。思えばCHOPLATEも、1年ぐらい考え込んでいらっしゃったんですよね、あの金型をつくるかどうかって。

福田: そうなんですよ。やっぱり経営状態もキャッシュフローもまだまだ不安な時期だったので。やっぱり、やりたいことはあってもお金がなかったらなかなかできないんですよね。新しいことを借金してまでやれるかといったら、できない。

木原: それは結局、目処が立ったから踏み切れたということなんですか?

福田: いえ、あの当時は全然目処は立っていませんでした。

木原: それは最終的に、どうして踏み切れたんですか?

福田: もう、行ってもイバラの道、行かなくてもイバラの道、だと思ったからですね。

木原: なるほどなるほど。

福田: それまで費やした半年間のことを考えると、これを無駄にするほうがもったいないので、じゃあやるかとなりました。

木原: サンクコストが。でも結果、どちらもイバラの道だと、思い切って進んだ道で宝箱を発見したと考えると、すごいですね。

福田: それは結果だけですけどね。でもほんとに、失敗したらダメだと思っていたというか、当初はかなり慎重になってしまっていたんですよ。
でも、当時それを任せていた社員が辞めたことがきっかけでした。それまではその人にお任せでやっていて、横から口出すだけだったんですけど、最終的にその人が辞めるとなって、「このままにはしておけないから、自分で代わりに進めよう」ってなったとき、覚悟が決まったんですよ。
「もう、やると決まったらお金を使ってでもやらなあかん」と。
もし彼が辞めていなくて、彼の担当のままだったら、もっと延期になっていたかもしれないし、横からごちゃごちゃ文句ばかり言っていたかもしれないと思います。それが、もう逃げられなくなったんですよ。

木原: 腹をくくらなきゃいけない状況に。

福田: そうそう。本当にそうでした。

木原: そうかそうか、面白いですね。なるほど。
そういう意味では、今、踏み切りたいけど迷っていることみたいなのってあるんですか。

福田: 迷っているというか、考えていることですが、この10年は、河辺商会が国内でビジネスが成り立つように、自社商品もそうですが、何かビジネスを新たに変えてでも、自立できる体制に持っていきたいと思っていて、でも次の10年は、新たな海外工場を立ち上げたいと思っています。

会社としては、自社商品が売れたからと言ってまだまだ安心はできないですし、売上的にも拡大しないと社会的な信用も上がっていかないので。そういう意味で、舵を切っていく必要があるんですが、将来的にはリスクヘッジという観点からも、生産場所が3箇所に増えた方がビジネスの広がりも出やすいと。
あとは、自分は海外支社の立ち上げで大きく成長できたので、そこで学んだ知見を活かしてもうひとつ立ち上げて、そういったことを他の人にも学んでほしいなという気持ちもあります。

 

木原: なるほどなるほど。経営面ではそういう拡大路線、海外進出みたいなところになってくるとして、国内、社内の部分の展望はどんな感じですか?

福田: 社内に関しては、「ものをつくる」とかそれを「管理する」ということに対しては長年やってきているので強いんですが、やっぱり「新たに売り上げをつくっていく」みたいなことに関しては、そもそもがそういう部署が本当になかったので、組織づくりをやっていかないとと考えています。

木原: 営業部署を強化するイメージですか?

福田: そうですね。ただ、これまでも営業の人が入ってくれたことはあるんですが、本当に数日で辞めたりとかがあって。全体的にも、「会社として売り上げを上げるための取り組み」ということに関しては、何となくみんな「考えることすら嫌」みたいなムードだったんですよね。

木原: 外から入れても難しくて、中で考えるのも難しいという状態。

福田: まさにそうです。それでも、どうにかしていかなければならないので、最近は、社内のメンバーの中でかなりのベテランを、ちょっともったいないとは思いつつ元々の製造の部署から営業技術に移ってもらいました。

木原: なるほど。営業と技術の隙間がもっとシームレスになれば、伝わりやすくなりそうですね。

福田: はい、そうして社内のメンバーから営業をどんどん広げるような取り組みをしようと試みています。
あとは、社内で営業の仕組みやノウハウがないので、私と他2名で外部の営業講習を受けたりなど。そうすると、お互いの中で共通言語みたいなものが出来上がってくるので、若干の手応えを感じています。

木原: おそらく、今必要なのは、「営業」の手前の「営業企画」なんですよね。外からパッと営業のプロが入ってきても、企画とか戦略が整っていないから動きようがないというか。

福田: ああ、まさにそうかもしれないです。

木原: まさにその部分を今、社内で耕していっているということですね。
そうしたチームづくりを含めた「人」の部分が、出会った当初に比べるととても健康的になったように外からは見えてます。

福田: まあ、ただ、辞める人も辞めますし。
とくに若い人は、やっぱり入社して3年から5年、「30歳の前に転職」というのを本当に考えるでしょう。
そういう意味では、「仕方ない」と思わなければいけない部分もあると思うんですけど、やっぱり何年も働いた人が辞めるというのは色々な意味ですごく、みんなにとってもショックなので、それを起こさないためにどうしたらいいかというのは考えなければと常に思っています。同時に、新しい人が常に入るような体制をつくったり、なども。

木原: なるほど。でも1個思うのは、声を上げればちゃんと届く会社だし、キャリアによらずちゃんと考えていることを形にできる会社だと思うんですよね。それって、規模が大きい会社や歴史が長い会社では難しいところがあると思うんですけど、河辺商会さんは、若い人が言い出したことでも「それや!!」となったらかなりのスピードでちゃんと変わっていくというか。
そういうところがもうちょっと外にもアピールできたら、「入りたい」という人も増えると思いますし、「もうちょっと頑張ってみようかな」という人も増えるんじゃないかなと思っているんですよね。

福田: そうかもしれません。私自身の現場との関わり方も見直しつつ、そうした取り組みも進めていきたいと思っています。

 

木原: 最後に、この社内報を含め、このプロジェクトに期待することや、どんなふうにしていきたいかなどありますか?

福田: 私自身は普段、そのときそのときの状況に応じて色々なことを言ってしまうことで、本来「長い目で見て、継続しているからこそよかったこと」に水を差してしまうことがあるんですよね。反省点として。
ただ、このプロジェクトに関しては、まめさん主導で、中長期的な視点から企画を考えてやってくださっているので、そこに関しては実はすごくありがたくて。その部分を信頼していますし、今後も期待しています。

あとは、こういう取り組みをしているからこそ、新しく入ってくる人でも、ちょっとこちら側に寄った考え方ができそうな人には、他部署であっても引き入れて、巻き込んでいけたらとも思います。

木原:なるほど。ありがとうございました。